2009年8月20日
日立ツール株式会社
日立金属株式会社
自動車部品用コーティング新技術と新基材を開発
〜自動車の環境性能向上に貢献〜
| 日立ツール株式会社(本社:東京都港区、社長:島順彦、以下 日立ツール)と日立金属株式会社(本社:東京都港区、 社長:持田農夫男、以下 日立金属)は、株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、社長:川村隆 以下 日立製作 所)の協力のもと、自動車部品用DLCコーティングの密着性を高める技術と皮膜の特性を高める自動車部品用基材(母材)を開発しました 。DLCコーティングの用途を拡げ、自動車の環境性能向上に貢献します。 |
記
1.背景
環境への対応が重要視される中、自動車の低燃費化、排気ガスクリーン化など環境性能への要求がますます高度化しております。そのため自動車部品メーカーにも燃焼効率の向上、軽量化、耐久性向上などへの対応が求められております。その中でもエンジンの動弁系や燃料噴射系摺動部品※1で発生するフリクション(摩擦)低減への対応は重要なテーマの一つです。また、エンジンに使われる摺動部品は、高温にさらされ苛酷な条件で使用されるため、耐焼き付き性※2の向上も要求されています。
フリクション低減と耐焼き付き性向上のため、従来から摺動部品には窒化処理※3などのコーティング(成膜)が行われてきました。しかし、要求される性能が高度化する中で従来のコーティングでは十分に対応できない領域がありました。そこで最近になってフリクションをさらに低減できるDLC(Diamond Like Carbon)コーティング※4技術が注目され普及し始めています。しかし、DLCコーティング技術の課題としては密着性の問題があり、用途を拡げるためには改善が必要でした。
2.概要
コーティング技術に多くのノウハウを持つ日立ツールと素材技術に定評のある日立金属は、基礎研究力に優れる日立製作所の協力のもと、様々な角度からDLCコーティングによる皮膜の密着性の改善について研究を重ねました。その結果、皮膜の密着性を低下させるコーティングと基材の界面に存在する不純物※5除去を強化することで、密着性を約50%以上向上(当社比)させることに成功し、信頼性を高めたDLCコーティング “L-Frex® ”(エルフレックス)を開発しました。併せて皮膜の特性を高める自動車部品用基材(母材)“ASL®555 ”(エーエスエル555)を開発しました。DLCコーティングの用途を拡げ、自動車の環境性能向上に貢献します。
2009年10月より、日立ツールが自動車部品用DLCコーティング“L-Frex® ”(エルフレックス)についてサービスを開始し、日立金属が皮膜の特性を高める自動車部品用基材(母材)“ASL®555 ”(エーエスエル555)の販売を開始いたします。
3.開発したDLCコーティングと基材について
(1)自動車部品用高信頼性DLCコーティング“L-Frex® ”(エルフレックス)シリーズ
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1. |
密着性を向上 |
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皮膜の密着性を低下させる,コーティングと基材の界面に存在する不純物※5除去を強化することで、従来のDLCコーティングの密着性に比べ50%以上向上(当社比)し、信頼性をアップしました。また、コーティング硬さも向上させました。(表1、図1、図2) |
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2. |
幅広い用途に適用可能 |
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硬さが異なるDLCコーティング(L-Frex ®S、L-Frex ®M 、L-Frex ®H)をライナップしました。(表1、図1)。 |
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表1 L-Frexシリーズの皮膜特性
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L-Frex®S |
L-Frex®M |
L-Frex®H |
| コーティング硬さ |
2000HV※6 |
3000HV |
4000HV |
| 摩擦係数※7 |
0.10〜0.15 |
0.10〜0.15 |
0.10〜0.15 |
| 剥離荷重※8 |
85N |
80N |
80N |
| 組成系※9 |
a-C:H |
a-C:H |
a-C:H |
図1 摩擦係数と皮膜硬さ
(2)自動車部品用基材“ASL®555 ”(エーエスエル555)
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1. |
自動車部品用高信頼性DLCコーティング“L-Frex® ”の密着性をさらにアップ |
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高Cr系マルテンサイト鋼※11をベースとした材料で高い疲労強度、耐食性をバランスよく確保するために添加元素の最適化を行っています。自動車部品用高信頼性DLCコーティング“L-Frex®”処理時の昇温でも硬さが低下せず高硬度(約60HRC※11)を維持でき、密着性もアップします。 |
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2. |
コーティング時間を短縮 |
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コーティング処理時間を短縮するため、450℃程度まで加熱した場合にも高硬度を維持でき密着性を確保することが可能です。 |
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3. |
DLCコーティング以外のコーティングの密着性もさらにアップ |
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DLCコーティング以外のコーティング(窒化クロム処理※12、窒化チタン処理※13などの窒化処理)の密着性をさらにアップします。 |
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4.研究・開発体制
| テーマ |
主担当 |
| DLCコーティング基礎研究 |
株式会社日立製作所 日立研究所 |
| DLCコーティング被覆条件の開発 |
日立ツール株式会社 基盤技術研究センター |
| コーティング専用基材の開発 |
日立金属株式会社 冶金研究所 |
自動車部品用高信頼性DLCコーティング“L-Frex®”について、2009年9月6日〜11日開催の“World Tribology Congress 2009”(於 京都国際会館)および2009年9月17〜18日に開催の“(社)表面技術協会 第120回講演大会”(於 幕張メッセ)にて、その詳細を発表いたします。
5.生産、サービス拠点
| (1) |
自動車部品用高信頼性DLCコーティング“L-Frex® ”シリーズ |
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日立ツール株式会社 松江表面改質センター |
| (2) |
自動車部品用基材“ASL®555 ” |
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日立金属株式会社 特殊鋼カンパニー 安来工場 |
6.売上目標
| (1) |
自動車部品用高信頼性DLCコーティング“L-Frex® ”シリーズ |
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2010年度 1億円/年
2013年度 5億円/年 |
| (2) |
自動車部品用基材“ASL®555 ” |
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2010年度 1億円/年
2013年度 10億円/年 |
以上
| 【お客様からのお問い合わせ】 |
| 日立ツール 松江表面改質センター |
担当 井上 |
TEL0852−60−5050 |
| 日立金属 特殊鋼カンパニー |
担当 竹原 |
TEL03−5765−4391 |
| 【報道関係からのお問い合わせ】 |
| 日立ツール CSRコミュニケーション室 |
担当 松野 |
TEL03−6858−2201 |
| 日立金属 コミュニケーション室 |
担当 南 |
TEL03−5765−4079 |
ご参考
[用語解説]
| ※1 |
エンジンの動弁系や燃料噴射系摺動部品 |
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動弁系摺動部品:バルブリフター,ロッカーアーム
燃料噴射系摺動部品:燃料噴射ノズル,燃料供給ポンプ等の部品
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| ※2 |
焼き付き |
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摩擦によって,金属同士が固着してしまう現象
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| ※3 |
窒化処理 |
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鋼などに窒素拡散させて,表面を硬化させる表面処理
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| ※4 |
DLC(Diamond Like Carbon)皮膜 |
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主として炭化水素から成る非晶質硬質膜。硬質炭素膜とほぼ同義。硬さはビッカース硬さ(※4)相当で1500から7000HVの範囲で、様々な性質のDLCが自動車用部品、切削工具、剃刀の刃、ハードディスク表面、ペットボトル内面など工業的に生産されている。
原料に固体炭素(グラファイト)を用い、これをプラズマにてイオン化し被覆する方法をUBMS(Unbalanced Magnetron Sputtering)法と言い、メタンなどの炭化水素系ガスを原料に用い、これをプラズマにてイオン化し被覆する方法をPCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法と言う。
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| ※5 |
皮膜と基材界面に存在する不純物 |
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基材金属表面に形成される数十nmの薄い酸化皮膜
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| ※6 |
HV(Vickers Hardness ビッカース硬さ) |
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工業材料の硬さを表す尺度の一つ。硬さ試験法は材料の特性に合わせた方法があるが、ビッカース硬さの特徴は汎用的であり、異なる種類の材料との比較もできる。ここでは、使用される材料そのものの硬さを表している。
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| ※7 |
摩擦係数 |
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物体の接触面に生じる摩擦力は、摩擦係数が大きい程大きくなる。
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| ※8 |
剥離荷重 |
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スクラッチ試験(引っかき試験)にてコーティングが剥れる荷重
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| ※9 |
組成系 |
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今回開発のDLCはアモルファス(a)の水素(H)含有炭素(C)皮膜:a-C:Hと表記する
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| ※10 |
マルテンサイト鋼 |
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Fe-C(鉄・炭素)系鋼から得られる組織。発見(19世紀)前から実用的には利用されていた組織で、日本刀の刃先にも形成されていた。高Cr系マルテンサイト鋼は、10%以上のCr(クロム)を含有させたマルテンサイト鋼で、通常のマルテンサイト鋼に比べ耐食性が高い。
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| ※11 |
HRC |
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工業材料の硬さを表す尺度の一つ。比較的高硬度材での表記に用いる。
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| ※12 |
窒化クロム処理 |
|
自動車部品のみならず、金型などにも使用される汎用セラミクス皮膜CrN
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| ※13 |
窒化チタン処理 |
|
自動車部品のみならず、切削工具などにも使用される汎用セラミクス皮膜TiN
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以上 |