H−ALOY合金と母材の強度を飛躍的に向上させたNi基合金シリンダH610(図1)を開発しました。現在、外径 120以下のシリンダを製造納入し、期待どおりの成果を発揮しつつあります。
最近のエンジニアリングプラスチックの射出成形業界では、プラスチックの高付加価値化およびコスト低減するために高射出圧力化や高サイクル成形、難成形材の成形など、
成形条件の過酷化が進んでいます。このために、耐食、耐摩耗性を有する高強度射出成形用シリンダが切望されていました。 しかし、これらのニーズに対し当社標準品のNi基合金シリンダH503は、強度面に限界があり、
シリンダ先端部にスリーブを焼き嵌(ば)めし強度をもたせることにより対応してきましたが、シリンダの製造コストが増え、製造工期が延びるという欠点がありました。
そこで当社では、H503をベースとして高強度Ni基合金シリンダH610を開発しました。 |
図1 H−ALOYシリンダH610

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H610は耐食、耐摩耗性に優れたNi基合金を、母材である構造用合金鋼の内面に遠心鋳造でライニングしたもので、次の特長を有しています。
(1)飛躍的な合金強度・母材強度の向上(表1)
(2)耐ヒートクラック性の向上(図2、図3)
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シリンダ材 |
合金層の特性 |
母材の強度 |
耐圧強度 |
種 類
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合金 |
母材 |
硬さ
HRC |
抗折力
kgf/mm2 |
抗張力
kgf/mm2 |
0.2%耐力
kgf/mm2 |
耐圧強度
(H503対比) |
標準材
(H503) |
H503 |
SCM440 |
50〜60 |
50〜60 |
70〜75 |
35〜40 |
1 |
開発材
(H610) |
H610 |
SCM440 |
50〜60 |
95〜110 |
82〜90 |
47〜55 |
1.7〜2.3 |
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図2 H503とH610の加熱後の組織の比較
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H503(加熱温度700℃)
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H610(加熱温度900℃)
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図3 ヒートクラック試験の結果
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| H610は小型シリンダを中心にこれまで2000本以上が出荷されました。その結果、期待された効果が確認されつつあります。焼き嵌めシリンダからの移行を検討する射出成形機メーカーも増えています。また、当社製スクリュとの材質面での相性もよく、過酷な成形条件にも対応可能であることが当社内の実験で確認されています。
今後はシリンダ適用寸法の拡大を進め、射出成形におけるプラスチックの高付加価値化およびコスト低減に大きな効果を発揮できるものと期待されています。 |