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たたらでは砂鉄と木炭を炉にいれて燃焼し、砂鉄を還元して鉄を製造します。その際、砂鉄中に含まれる不純物は高温で熔融し、スラッグ(鉱滓、ノロ)として排出されます。たたら製鉄では、このスラッグを鉄滓(てっさい)と呼び習わしています。製錬により砂鉄の約半分は還元されて鉄となりますが、他は高温(1200℃以上)で釜土(炉壁の粘土)と反応し、珪酸系の融体を作り鉄滓に溶け込みます。換言しますと、たたらでは砂鉄が釜土を食いながら製錬を進め、その結果炉壁が痩せて、耐えられなくなったとき操業が終わるようになっているのです。
鉄滓を化学分析しますと主にSiO2(珪酸)、Al2O3(アルミナ)、FeO、Fe2O3(鉄の酸化物)、TiO2(二酸化チタン)から構成されていることが分かります。代表的なたたら鉄滓の化学組成は次の通りです。
表 代表的なたたら鉄滓(製錬滓)の化学組成(重量%)
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- TiO2量に差がありますが、これは原料砂鉄中のTi量の差に基づくものです。
- T.Fe(全鉄量)に差があるのはケラ押し(靖国)とズク押し(菅谷)の違いによるもので、ズク押しの方が若干鉄の歩留が良いようです。
- SiO2、CaO、MgO、Al2O3を一般に造滓成分と言いますが、その和、すなわち造滓剤量を比較しますと、ケラ押し(靖国)の場合の34.68%に比べ、ズク押し(菅谷)の場合は40.98%と造滓剤量が多くなっています。これも一つの特徴を示すものです。
- 酸化鉄はFe2O3→FeO→Feのように還元されますので、FeO/Fe2O3の比をとりますと、還元の進み具合を計ることができます。この比は真砂の場合が16、赤目では65となり、赤目すなわちズク押しの方が還元率が高いことが分かります。
鉄滓の性状は、たたら操業の段階によっても違ってきます。次の図はズク押しの場合の例を示していますが、籠りから下りにいくにしたがってTiO2、V2O5などの砂鉄含有成分が増加し、T.Fe(全鉄量)は減少しています。なお、FeO/Fe2O3の比で見られるように、下りよりも上りの還元性が大きいことが注目されます。
表 ズク押し(菅谷たたら)における鉄滓組成の変化(重量%)
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製鉄遺跡の中で製鉄炉跡とならび鉄滓が重要視されるのは、鉄滓が製鉄技術に関し非常に多くの情報を与えてくれるからです。例えば
- 使用原料が砂鉄か,鉄鉱石か? 砂鉄だとすれば、真砂か、赤目か?
- 製錬時の鉄滓(製錬滓)か、鍛冶の際の鉄滓(鍛冶滓)か? 鍛冶ならば大鍛冶か、小鍛冶か?
- 製錬技術の程度(温度、還元率、ズク押しか、ケラ押しか?)
- 噛み込んだ木炭から使用木炭の種類およびC14分析による稼業年代の推定
研究が進めば鉄滓からもっといろいろなことが分かるようになるかも知れません。製造した鉄器は腐食されてなくなることが多く、また古鉄として再利用されますので、なかなか残りません。しかし、鉄滓は「金糞」と呼ばれて近くに廃棄されていたので、鉄滓の出る所の近くには何らかの製鉄遺跡があったと考えられます。しかも、鉄滓は酸化物の形で極めて安定ですから昔のままの状態で残されており、貴重な資料になります。
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