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たたらの歴史

鉄滓(鉱物組織)

化学分析値のほかに顕微鏡による鉱物組織の観察からもいろいろな情報が得られます。
製錬滓の場合、鉄滓の組織は主にファイヤライト(FeSiO)と珪酸系のガラス質から構成されています。Tiの高い砂鉄(赤目)が用いられていると、それにウルボスピネル(FeTiO)やイルメナイト(FeTiO)といったチタン鉱物の結晶があらわれます。これらの結晶組織の状態からそれが生じた温度や冷却速度などが推定できます。

大鍛冶滓(精錬鍛冶滓とも言われる)の場合は、たとえ砂鉄を用いたものでもTi含有量は非常に少なくなり、チタン鉱物の晶出はほとんどありません。代わりに鉄分が50%以上と高くなり造滓剤量も減少し、鉱物組織のなかにヴスタイト(FeO)という鉄の酸化物が晶出してきます。製錬滓でもケラ押しの場合はヴスタイトの樹枝状結晶が少し現れることがあり、ズク押し滓と大鍛冶滓の中間的な組織になります。

小鍛冶滓(鍛錬鍛冶滓とも言われる)ではヴスタイトが大きく、より一層発達してきます。また、鍛錬の際に発生する鍛造薄片(鉄の酸化スケール)が随伴してきます。

次に代表的な鉄滓の鉱物組織と鍛冶滓の化学分析値をご参考として示します。

代表的な鉄滓の鉱物組織の顕微鏡写真
(いずれも同じ倍率の写真です)


表 代表的な鍛冶滓の化学組成(重量%)

(注)(1)金屋子たたら  (2)靖国たたら  (3)都合山


このような鉄滓の研究によって古代の製鉄の一端をかいま見ることができます。その結果、古代において山陽側で鉄鉱石による製鉄がかなり盛んに行われたこと、弥生時代には精錬鍛冶(大鍛冶)は行われていたが、製鉄は行われておらず、製鉄は6世紀ごろより始まったことなどが明らかになりました。

しかし、それは明治以降のたたら技術によって得られた鉄滓の情報を頼りに昔の技術を推察しているわけで、昔の技術が明治以降の技術と掛け離れたものであったとしたら、誤った推定をすることになります。例えば、温度が低く、還元性も低い炉況で製錬(?)された場合の鉄滓はどうなるのでしょうか。恐らくケラ押し鉄滓と鍛冶滓の中間的な性状になり、鍛冶滓と判定されるかもしれません。今後、このような原始的製鉄法から生じる鉄滓について研究して行くことが必要だと思います。


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